Archive for the ‘映画雑観’ Category

CHLOE

2009年 カナダ・フランス・アメリカ アトム・エゴヤン作

鬼才と評価されることあってよくもま~こんなストーリーを思いついたものである(笑)

サスペンスというより途中からホラーっぽく見えてなんとなく惰性で観終わってしまった。

ほとんど主人公の妄想につきあわせられた感があるものの

娼婦を演じた女優にはほんの少し惹かれてしまった。

本題からするとこっちが主演だろうし主観的にもおもしろい。

最後に形見の髪飾りがカタチを変え想う人の一部になることで幸せを得るとは・・・・

ほとんど意味不明な結末である。

そんな日常の暮らしをトロント郊外で撮影したのだろう・・・

ポイントに建築家の作品が使われているのが途中から気になってしかたがなかった(笑)

調べてみると・・・・

建築家ドリュー・マンデル作「ラヴィーン・ハウス」

建築家ダニエル・リベスキンド作「ロイヤル・オンタリオ博物館」

などが登場する。

(リベスキンドなんてなつかし~って感じで通称ROMは酷評された駄作)←やっぱり!

ま~映画によくそんな建築家の作品が舞台となるが・・・

ブーレ:「建築家の腹」

ジョージ・ワイマン:「ブレードランナー」

フランク・ロイド・ライト:「ブラックレイン」

リチャード・マイヤー:「レッドドラゴン」などなど・・・

本筋から離れこんな楽しみ方もおもいしろい時もあります・・・(笑:sim)


BIUTIFUL(ビューティフル)

2010年 メキシコ・スペイン アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ作

幸せとは、どの程度なものだろう。

両手の手の平を合わせ天から降ってくる幸せを受け止めるとしたら

世界中のみんなが、一人ひとり平等なはずである。

(また一人で生きて行くには十分な量かもしれない)

しかし、生きて行く道程の違いこそある中、家族が増え、守る者が増え支えてあげる者ができると

手をつなぎ手と手を握って生きて行かなくてはならない。

そんな片手の手の平からこぼれおちる幸せを

家族は、小さい手で受け止めてくれている。

いつしか、お互いがかけがえのない存在になり大切な命となる。

もっと大きく見据えるならば社会全体もその幸せが集まって出来たカタチ。

そんな情緒的な想いを現実社会と対比しながら超現実的問題を描いた傑作。

家族の大切さや課せられた想いを様々な人種や宗教を通して深くえぐっている。

置換的な手法の元、最後のエンドロールは立ちあがることさえできないくらいである。

最初の幻想的な雪山のカットは、必見だろう(sim)

ちなみにタイトルの綴り間違いは、娘に教えた「Beautiful」のことである。

モールス

2010年 アメリカ・イギリス マット・リーブス作

2008年に公開されたスウェーデンホラー「ぼくのエリ・・・・」のリメイク版。

(本人いわくリメーク版ではないそうだ・・・・)

ま~クローバーフィールドの監督が手掛けたことでいろんな意味を期待しながらおとずれた。

確かに二つの作品については、全くの別映画としてとらえるべきでだし

一つの原作を二人の監督が表現し映像化することを比べるのも面白いかも(笑)

この作品については、アメリカ的な表現がおおくて直接的な怖さを感じる。

ただ、今まで観てきたバンパイアとは一線をひくものがあった。

少女の背負った悲しみやさびしさなどよく描かれている。

とくにシュヴァリエとの関係や少年との恋などといった情緒的な部分も一瞬感じとれる場面もある。

・・・・シュヴァリエといえば・・・・

日本にもアニメ作品:BLOOD+(プロダクションIG)なるものがある。

なんとなくオーバーラップしてしまうのは変だろうか?

昨今こんなサブキャラ的ストーリー展開するものの多い。

ラストシーンにおける少年と少女のやりとりなど洒落がきいていて

これから展開するストーリーがとても気になる一場面だろう。

おそらく少年も少女をまもるシュヴァリエになってくことに違いない。

ともあれ深夜のスクリーンを前に誰もいない館内(4人くらいいたかな:笑)でみるには

思いのほか背筋が寒くなるラブストーリーホラーだった!(sim)

MR・NOBODY

2009年 ベルギー・フランス・ドイツ・カナダ ジャコ・ヴァン・ドルマル作

いくつもの人生を生きてきたかのように語りだす老人。

人生の岐路を選択しなければならなくなった少年ニモ。(←酷だね~)

この同一人物により

「未来における過去」と「過去における未来」を客観的にそして主観的に描き出すストーリー。

美しさと愛しさが交錯する物語は、大切でもありどうでもよかったりと

二極の間をさまようことに・・・・・・

結局、

観ているこちらも

(中盤とてもつまらないくらい・・・・楽しい?)

主人公ニモ少年も

どちらかを選択することを避けなければいけない結果になっているところは、面白い構図です。

究極な選択肢の場面で

どの道を選ぶか?・・・・選んだ結果どんな結果になるかを想像できる範囲で考えてい見ましょう。

けっかそれを背負うことの重さに負けた?(予知した)少年はある決断をします。

まだ幼さと少年から青年へと成長していく過程の本人では非常に重いテーマなのでしょう。

その瞬間にいくつものストーリーをいくつもの自分が同時に歩み出すこととなり

最後は年老いた自分の元に帰ってくるというもの。

複線の多さにはビックリです。

思い出なのか・・・・

想像なのか・・・・、はさておき時間と空間との関係性を多面的に直感映像で綴った美しく愛しい作品です。

なんとなく癖になりそうで・・・・一人で楽しむべき映画かな~!(笑:sim)

アリス・クリードの失踪

2009年 イギリス J・ブレイクソン作

とても気になっていた作品がスクリーンに掛けられるとあってワクワクしながら訪れた。

予想以上の出来に驚きそして楽しむことが出来ただろう。

現実逃避された空間と最小限の登場人物が、リアルさを欠きながらも

深層心理ゲームを繰り返していくヒューマンストーリー。

非常に計算し尽くされた展開は見事というしかない。

一方、ここぞという時の裏切りともいえる大逆転なストーリーに笑いさえ起こる。

途中、誰が主役?かというくらいそれぞれの立場がクルクル変わる様は、

こちらまで引き込まされる力強さだ。

いわばロジックストーリーのデパートともいうべき作品だろう。

そんな絡み合った展開がどんな結末を見せるか!

(やはりここが肝心だろう:笑)

ラストにおけるシーンがそんなドラマツルギーのカタチをみごとに表現した傑作です(sim)

お家をさがそう

2009年 アメリカ サム・メンデス作

日本で言う「監督主義プロジェクト」の第3弾として公開されたロードムービー。

シリアスマン(コーエン兄弟作)に次ぐこの作品はタイトルからして気になった(笑)のもあって

ちょっと見のつもりで入館。

普通、結婚したり子供が出来たりすると「探す」というより「家を建てる」という表現になる。

「家を探す?」という観念は日本にはない。

文化の違いかな?

アメリカでは、一生のうち家を持てる割合は非常に低くいわばリフォームして暮らすのが常識。

アメリカンドリーム的なムービーが受けるわけである。

同棲中の二人に子供が出来て・・・ふと考えると生活の基盤となる場所が無いことに気づく。

そこからストーリーが始まるわけだが

ロードムービーというくらいなのでいろんな地方を訪れながら二人にとっての家(幸せ)を求め考える。

様々な友人や知人・身内が登場していく中、アメリカの持つへんな一面が浮き彫りにされる様は

ブラックでおもしろい。

・・・・結果、次第に「家さがし」から「幸せ探し」になっていく!

いくつくところは、キラキラした豪邸でもなく、やさしい隣人でもなく、

両親と暮らした想い出がたくさん詰まったぼろぼろの空き家と美しい風景。

それがまた、アメリカ人らしかなぬ印象的で情緒的な映像が、

入館してから続いたおふざけモードを感動へと一発チェンジするあたりがとてもよかった(sim)

木漏れ日の家で

2007年 ポーランド ドロタ・ケンジェジャフスカ作

何気に訪れた今日。

久しく忘れかけていた「想い出」に浸る事が出来た。

この作品!原作は「死の時」!だそうだ。

長年住み慣れた家を中心に老婆の人生に一遍を切り取った秀作だろう。

近隣とのトラブル!

家族との隔たり!

年齢といった老いとの葛藤!

主演の女優の矍鑠とした立ち振る舞いと美しい風景。

全編モノクロームのフィルムには色鮮やかにストーリーがすすむ。

愛犬フィラのすばらしい表情が特に印象に残った。

切なくも励まされる・・・そして愛しくなるヒューマンストーリーだろう。

全編が家でのストーリーにやはり心引かれるものがあった。

家族も無くひっそりと佇む住まいはなんと味気なく寂しいものか。

想い出のみが回想される時間のなんと重くさびしいものか!

美しくも考えさせられるシーンがたくさん表現されている。

やはり寄り添ってくれる家族がそばにいてくれることの素晴らしさを改めて思いやられる(sim)

コクリコ坂から

2011年 日本 宮崎吾郎作

とても良く出来た作品。

今の時代だからこそ良き昔を感じられる世界観は空想等ではなく現実味のあるリアルな

趣を現代人の我々に問いかけるよう美しくも懐かしさを感じさせる。

とくにあり得ないような学生時代の活動的前向きな描写はあきれるを越え

応援したくなるような面白いテーマだった!

(ほんとはもっと過激だったのだろうが!)

ちらほら見せる少女の想い・・・

少年への葛藤等がいいタイミングで現れている。

とくに坂道を下りながらの二人の会話にはあたらしい描写手法や

新人監督の好奇心等いろんな取り組みをみてとれる。

一時間半少しの時間の中で監督自身が新しい手法の取り組みを惜しげも無くやろうと

している感と美しい背景等がベストマッチしている。

特に路面電車や客船などのタッチは圧巻で美しい。

坂の上に毎日あげられる旗を通してえがかれるセンチメンタルな切ない想いや

絶え間ない慈愛的な父への想いなどがよく描かれた美しい作品だろう!(sim)

PS:偶然お会い出来たクライアントのご家族!

皆さんお変わりなく元気で嬉しい限りです!(sim)

トランスフォーマー 3

2011年 アメリカ マイケル・ベイ作

レイトショーでは観ないほうがいいかも(笑)

前作・前々作のユーモア的ジョークが抑えられ終始、戦闘シーンが続く!(しかも3D)

人気シリーズには珍しく上映時間も長い。

マイケル・ベイ独特の撮影手法も重なって観るポイントを追うのに必死・・・・(苦)

字幕をよんだり変形を見届けたり(笑)忙しさ満点である。

これには、相当な体力がいるだろう(泣)

(最近は視力も衰え回復しないのである・・・)

当初の作品は単なるロボット映画という枠をこえヒューマンストーリー的シナリオが魅力の一つだった!

落ちこぼれでは、あるもののどこか憎めない青年のサクセスストーリー・・・・

恋人との掛け合いや愛情・・・・それに駆け引きなど!

ミスマッチな関係もおもしろかった。

しかし今回から脚本家も三人から一人と整理されサブストーリー的要素が無くなったように思えた。

(ヒロインの変更も違和感の一つだ。)

結果・・・・残るものといえば単なるロボット同士の戦争映画である。

このシリーズも本作が限界ぎりぎりだと思えた次第だ。

やはり深夜の映画鑑賞は静かに過ごしたいものである(笑:sim)

DIVA

1981年 フランス ジャン・ジャック・ベネックス作(セザール賞:4部門受賞)

フランス映画にはめずらしくサスペンス仕立ての趣。

今見ると物足りなさはあるもののなんとなくパロディされた構図や風貌など通じるものがある。

歌姫(ディーバ)のまわりで起こるファンとの掛け合い。

別次元ですすむ事件簿。

何ら関係ない両者が導かれるように絡み合って行く様は終始気になってしまう。

シンシア演じるディーバの美しい歌声はストーリーを離れ魅了されること間違いなし。

ヌーベルバーグ以降このような作品が台頭していくのだがベネックスは独特である。

もちろんベッソンやカラックスといった代表する監督も忘れられない。

作品の中でシンシアが発する想いに「芸術と商業」の関係性を説く場面がある。

相反する両者とどのように付き合い接していけばいいのか考えさせられる場面だ。

実際ベネックスも表現の自由を確保する上から

カルゴフィルムを立ち上げベティブルーで成功を収めている。

・・・・

なぜかシンシアの叫びがベネックス本人の叫びに観えた秀作だろう!(sim)